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粉引きについて思うこと

もとはと言えば、安南が全ての出発点でした。ぼくの場合、これが作りたいがために陶芸家になったようなもんです。いや、まだ他にも作りたいものはあるんですよ。でも、とにかく一番に作りたかったのは、安南でした。
粉引きも、陶芸家になった当初から頭の中にはありました。でもそれは、今のようなゴツゴツしたものでは決してなく、どちらかといえばもっと清らかな、爽やかな、涼しげなイメージだったように思います。いつからぼくはこんなにゴツゴツした暑苦しいものを作るようになってしまったのだろう。今回の窯出しを経て、そんなことを改めて考えるようになりました。

冒頭にも書いたように、もとはと言えば、安南です。安南めし碗も安南そば猪口も、安南と銘打ってますが、実は粉引きでもあるんです(いや本来こんなものを粉引きとは呼ばないです、多分。正しく言い換えるなら、化粧掛けした器、ということです)。今回窯出ししためし碗を見てもらえればそのことがよく判ると思います。貫入とはまた違う、粉引きのひび。これがあるのとないのとでは、安南めし碗のその表情に、大きな差が出ると思うのです。このひびがあるからこそ、安南めし碗のこの表情があるのだと、自負しているのです。で、このひびを他のものにも活用してみよう、というところから、ぼくの粉引きはスタートしました。

最初は安南で使う釉薬よりも艶を抑えた、艶消し釉との組合せ。次に、艶のほとんどないマット釉との組合せ。素地もどんどん赤土の方へ、つまり本来の粉引きの方向へシフトしていって、結果、今の粉引きの姿があります。

どうなんでしょう?これ。よく判らなくなってしまいました。

マットな粉引きは、今はどうか知りませんが、少し前まではちょっとした流行(はやり)だったような気がします。ぼくもそれを意識していなかったと言えば嘘になります。よりマットなものを好むお客さんも、実際のところ多いように思います。でも、。

正直に言ってしまうと、今回窯出しした粉引きの作品には、今だスッキリしないものをぼく自身感じているのです。それがいったい何なのか、どういう風にこれを説明したらいいのか、ぼくにもさっぱり判らないのですが、。例えば、先に挙げた安南めし碗、もちろん課題はまだありますよ、ロクロの未熟さとか下絵の具の調合とか焼成雰囲気の安定性とか、もうちょっとなんとかしたいと思うことはいくつもあります、でも、何て言うか、いろんな要素の組合せという点では、ぼくの中ではかなり完成度は高いんじゃないか、と思っているのです。それはただの自己満足かも知れないけれど、でもだからこそ、ぼくの中ではスッキリしてるんです。それに比べて、今回のマットな粉引きの作品には、スッキリしないものが何か残ってる感じ、なのです。いったい何なのでしょう?、いったいどうしたら良いのでしょう?

マットな粉引きはこれまでいろんなパターンで作ってきました。土によって、粉引きの濃さによって、さらに、釉薬の濃さによっても、その表情は目まぐるしく変化します。それらを一度整理して見直して、そこから改めて自分の進むべき方向を見つける、そんな努力が今は必要なんじゃないかという気がします。いやむしろ、今あるひび粉引きは一旦忘れて、新たに粉引きを作っていった方が良いのかも知れません。そんなことより、今は初心に帰って、安南の作品をもっと充実させるべきだ、という気もします。もしかしたら、しばらくは安南一本に絞ってもいいんじゃないか、そんな気さえしてきました。

さて、、そろそろ次の窯焚きに向けて準備を始めないといけません。